2018年6月に開催されたイベント『摩天楼に降る涙』は、私にとってもっとも大切で印象深いものになった。
私はこのイベントを、カミロ主のひとつの到達点だと思っている。率直に言って、これを見ることができた今となっては、もうこれで夢100が終わると言われても悔いはないくらい。……いや、もちろん終わってほしくなんてないけど。
ただ、もう私は最高のカミロ主を見せてもらったのだという実感を、『摩天楼』で得ることができた。だからそれ以前よりは納得して、その時を迎えられるだろう。
『摩天楼』は、立ち絵、物語、ゲームシステム上のカミロさんの扱い等々、すべてにおいて完璧だったと思う。欲を言えばお迎えは報酬よりもガチャでしたかったが、報酬としての扱われ方においては私的にはこれ以上にないほど素晴らしいものだったので、そこは始まってしまえばあまり気にならなくなった。
ところで、私は推しのために「泣く」という経験をあまりしたことがない。
推しの供給が発表されたとき、そしてそれを実際にお迎えした時等々、周りのフォロワーさんたちが発する「泣いた」とか「泣いてる」という言葉が、私には実感として理解できなかった。なぜなら私自身が「泣けない」からだ。
身体的反応ならないわけではない。いや、むしろものすごくある。公式に限らず、予期せぬ形でTL上にカミロさんの名前を見ただけでも、心拍数は上昇するし、胃は痛むし、お腹のあたりが一気に冷えて誇張でもなんでもなく一瞬にしてお腹を壊す。食べ物もあまり食べられなくなる。……なのだけど、なぜか涙だけは出てきたことがなかった。
その最初の例外となったのが、摩天楼の覚醒後の立ち絵が両方とも発表になった時だった。
発表の日、まず昼の12時に「チラ見せ」(これについてもいろいろ言いたいことがあるのだけど、きりがないので省く)があった後、18時にイベント登場王子が誰かということと、彼らの月覚醒の姿が明らかになった。そしてその二時間後の20時に太陽覚醒の姿が発表されるという、やや珍しい形での発表だったのを記憶している。
このふたつの姿が出そろった時、私は初めてカミロさんのために泣いてしまった。
月覚醒の立ち絵の衝撃。そこで沸き上がった様々な感情を、太陽覚醒の立ち絵は一瞬にして「浄化」してしまった。だからそれはカタルシスの涙だった。
ひとつ付け加えておくと、私がカミロさんのために泣いたことはあと一度だけある。
それはいつかと言えば、摩天楼から1年3か月後に開催された次のイベント限定である『光へ向かう気高き翼』の王子ストーリーを読み終えたときだ。
だがこの時の涙は、感動とも浄化とも少し違う。
新しいイベ限の彼と出会ったことで、そしてその物語が『摩天楼』とは全然別の世界線に属するものだったことで、私は思い知らされたのだ──これで本当に、私にとっての『摩天楼』は終わってしまったのだということを。これによって1年3か月にわたって続いていた摩天楼イベの余韻から、こうしていやが上にも抜け出させられたのだということを。
私の中で1年以上終わらずにいた『摩天楼に降る涙』というイベントは、いまここで本当に終わってしまった。
あの時ダテンで結ばれた二人は、もう公式で継続する世界線のどこにもいない。私が何よりも大好きだった彼と彼女の物語は、あの最高の形のまま、終わってしまったのだ。
だからそれは、私にとって『摩天楼』からの卒業の涙だった。
〈次につづく〉
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